執筆実績

中小企業診断士試験振り返り(2005年~2013年)

2021/01/10

中小企業診断士試験勉強 本棚

1 1次試験総括

(1)試験への動機付け               

私は、仕事上で起こった人生最大級の逆境の解決手段として「自分に力を付けてやろう」と試験に臨み始めた。よって、「どんなことがあっても、石にかじりついても、どんな手段を用いても(良くはありませんが)」、受かってやろうと決意した。それから、約9年間、1次試験合格まで全ての自分の空き時間とエネルギーを注ぎ込んで試験に挑戦し続けてきた。

 

(2)精神的支えの大きさ

私は独身で試験をスタートしているので、衣食住を賄い、仕事をしながらの試験勉強であった。よって勉強に集中できる時間や環境を捻出するのに苦心した。しかし、私には幸運にもそんな私の境遇を知って励まし続けて下さる人生の良き先輩がいた。その方の支えがなければ、毎年落ち続けても、翌年本試験に臨み続けられる精神状態は維持できなかったと思う。この場をお借りして、深く感謝申し上げたい。

 

(3)9年間の受験歴

足掛け9年間も試験に受かるためだけに勉強してきた訳である。はじめは、箸にも棒にもひっかからない状況でのスタートであったが、何年も努力を続ければ実力がついていくことの良い証明になるのではないかと思う。

 

受験記録一覧表

2 試験を戦うために必要な3つの要素

試験合格のためには、私なりに3つの大きな力が必要だと思っている。それは、(1)基礎学力、(2)精神的再生力(レジリエンス)、(3)本番での実力発揮力である。以下順にご説明していく。

(1)基礎学力を身に着けるために

試験科目に関する知識や解法のテクニックを身につける。これが何より必要であるが、そのためには急がば回れで、着実に基礎力をつけ続ける必要がある。その方策として私がとった対応は下記である。

 

a  各科目の基本的勉強スタイル

科目勉強内容 
経済学・経済政策受験校の講師室に何度も足を運び、講師に45度曲線などの必須論点を、理解するまで教えていただいた。暗記ではなく図解にして理解するようにしたので、同じ論点にも関わらず、角度を変えて出題される本試験にも対応できるようになっていったと思う。
財務・会計受験校で簿記2級講座をとって事前に学習しておいた。個人的には一番大変で重い科目だと思っている(脳をパソコンで例えると一番CPUを使い、電気容量を消費する科目)。対策は、毎日一問手を動かすなどして解き、過去問の傾向を抑えることである。問題自体は難しくても、同一論点での類似問題が出たり、解答選択肢は選び易くなっていることも多かったように思う。
企業経営理論受験校の答案練習や模試は上位に入り、点数も80点位ならコンスタントにとれていた。しかし本試験ではいつも50点前後しかとれない。この科目が最後まで苦手科目化しそうで諦めかけた。その原因及び対策は下記のとおりである。
<原因>
・ 組織論の問題は何故その答えになるのか、大手受験校3社の過去問解説を読んでも理解・納得できない。
・ マーケティングに関しては見たことのない問題が出て、どこから出題されているかわからない。
・ 経営戦略論の問題は1問あたりの文章が多すぎて、読んで何を聞いているのかを素早く捉え、答えることが難しい。解答も惑わせる選択肢が多いので、2択位までしか絞れない。
<対策>
・ 受験校の科目講座をとるのをやめ、「弱小診断士会」というグループ勉強会に入会した。そこでは「何故この問題の答えがこれになるのか?」などを多年度受験生などと議論を交わしながら、解法の検証を行えた。
・ 試験委員の作問ネタを探した。試験委員の出版物を可能な限り探索し、国会図書館や教授の大学ゼミのホームページ、大型書店などで探し回った。その結果、本試験と全く同じ図表が出ている本を発見し、その試験委員の図表などを中心に学んだ。
・ たった4、5問でも捨てなかった。多年度受験生だからできることかもしれないが人事・労務関係の問題が約4、5問程度ごと出題されるが、これをとるために社会保険労務士講座を通学で1年通った。結果的に企業経営理論はこの年に合格できた。
運営管理この科目は幸運にもそれ程苦労はしなかったので、受験校のカリキュラム通りに勉強することで合格することができていた。
経営法務民法、会社法、知財など幅が広く、問題もひねってある。学習の途中で
つまずいた際に、基礎知識力を付ける必要があると感じ、ビジネス実務法務検定2級の講座をとり、一から勉強した。
経営情報システム学習の途中でつまずいた際に、ITパスポートと基本情報技術者試験の講座を受講し、一から勉強した。基礎固めにはとても良かった。また、パソコンの仕組みがわかるようになり、様々な場面で役立った。
中小企業経営・政策各施策ごとに①補助対象者、②補助内容、③申請先などの一覧表を作り、他の施策と混同しないよう取り組んだ。この結果、70点台を2回位とれるほどになった。

b  苦手から抜け出せなかった科目、「企業経営理論」の対処方法

この科目が結果的に最後の年まで合格できなかった。それでも一回でも合格できたのは、問題の題意を正確に捉えようと努め続けたからだと思う。

対策は、なぜ正当できなかったのかの原因分析(a イージーミス、b 正しく読みとれていない、c 理解が間違っているなど)を行い、特にc 理解が間違っている問題については、深掘りして納得いくまで追究・研究して、腑に落ちるようにした。

 

図表 2-4-4 平成22年度 企業経営理論本試験「間違った理由ノート」(抜粋)

(2)精神的再生力(レジリエンス) 

試験後、不合格というどん底に突き落とされても、毎年何度でも這い上がれるような精神状態を築けるようにすることである。

これは人によって様々で、プライベートな部分もあるので今回具体的内容は控えておくが、これがないと様々な困難で一気に止めてしまう可能性が増すので、各人での対策が必要である。

(3)「本番での実力発揮力の重要性」

一発勝負の場(本試験)で実力を十二分に出せるようにすることが重要である。戦場である試験会場では暑さや空調の効き具合、周囲のプレッシャー(「書く音がうるさい」等で睨まれる)等、色んな「魔」があり、これに負けずに集中力を維持できるようにする必要がある。そのために私が行った対策は下記である。

a 戦い(試験)前の準備

試験前は職場の夏休みなどを約1週間利用して、自習室などに缶詰、近場のホテルに前泊、眠れる環境を整え、勝負の準備をした。

 

b 戦場(試験会場)での戦い方

毎年試験会場は戦場と言い聞かせ、誰ともしゃべらない、時間通りに飯を食べてエネルギー補充する。トイレ争奪戦に負けない、周囲に惑わされずに集中できる環境を自分なりの方策で作るなどした。

 

c 戦い後(試験結果)の認知不協和の回避活動

終わっても解答速報などは見ずに受かっていると信じ、ネットや教科書などを読み返しながら、少しずつ答え合わせを行った。これは企業経営でいうところの、「試験後の認知不協和の回避」であった。

 

これを行うことにより、結果的にその年に試験に落ちたとしても、落ちた原因をうやむやにすることがないので、翌年の再トライに役立ったように思う。

3 多年度受験生活に役立った勉強管理方法

以上、足早な「試験を戦うための3つの力」の説明であったが、最後に、私が工夫した勉強管理方法を紹介する。

 

a 受験機関で良い先生に出逢えるかが重要

私はある大手受験校に通学した。そこは私の学生時代の先輩が別講座で講師をしているなど、縁を感じた学校であり、大変安心できた。受験生を長年続けられたのも、良い先生に出逢えたことによるところが大きい。

 

b 受験校で教えを請うたり、自分であみ出した勉強方法

・「教科書の重要箇所には蛍光マーカー、余白には関連知識を記載」
教科書を通読し、重要個所にはマーカーをすると共に不明な個所や解き方のわからない点は全て調べ上げ、教科書の余白に書き込んだ。そして、それをいつでも読み返して覚えるようにした。 

・「答案練習や公開模試などの復習方法」
間違った選択肢の単語や数字等を赤ペンで修正し直し、設問自体を覚えるようにした。このことにより引っ掛け問題の作り方がわかったり、関連キーワードも併せて調べられたりして良かった。

・「参考書は何時でも検索し易く、汚れや破損対策を」 大切にしていた教科書などは検索し易いようにインデックスをすると共にビニールカバーで汚れ対策を行った。 インデックスはラミネート式が使いやすく良かった。これでページ検索の時間を短縮できるようになり、「あの論点、どこにあっただろうか?」、「あれ、この過去問、他の年度の過去問に似てないか?」などの疑問が浮かんだ時に直ぐに調べることができ、重宝した。

・「ファイリング技術の重要性」
私が使った中ではキングジムのオーリングファイルが一番使いやすかった。すぐに開けられ、沢山保存でき、さらにすぐに外せることは、資料の整理にはとても役に立ち、重要なことであった。
そして、出来上がったファイル群が次ページの3段ボックス約2個分のものである。

4 苦手科目の合格率が低い年度に70点を超えて合格があった 

受かった年度は試験会場では、「ここまで勉強した奴はいないだろう。」と自信を持ち勝負(試験)に集中することができた。

そのお陰で、9年目にしてやっとではあるが、しかも1次試験だけかもしれないが、なんとか合格することができた。

私の方法は褒められたものではない点もあり、また、いわゆる「地頭の良い」基礎知識の豊富な方からしてみれば、「何をどんくさい」と思われるかもしれない。

 

しかし、私にとってこの1次試験合格は診断士資格取得へと繋がり、かけがえのないものとなった。
この資格はその後の私の仕事人生において強力なパスポートとなっており、今後もその威力は職場内・外において増していってくれるに違いないと大いに期待している。

 

わずかな差でも「合格というバー」を越えられない側と超えられた側では見える未来や人間関係の広がりは大きく異なることを実感する。
是非、読者の皆様も1次試験の合格を勝ち取っていただくことを願っている。諦めずに、頑張って欲しい。  

詳しくは、こちらをお読みください。 

-執筆実績