1 依頼元はダイレクトに商工会から
今回は有難いことに、商工会担当者からダイレクトにご依頼をいただくことができた。診断士のチーム内で行うわけではないので自由だが、その分経営者へのヒアリングや事業把握の為の下調べに時間を要したり、責任の重さを感じた。申請書は、上辺だけの知識で書いても、技術士などの審査員には「こいつわかってなくて書いてるな!」とすぐに見抜かれてしまう。よって、自分が納得するまで、何度も何度も当該事業内容を理解するよう努め、調べることが重要だ。
その際に、当該技術調べに時間や労力を惜しまないことが重要だった。
2 現状の実力以上の力を出し切る
補助金交付要領を熟読すれば、加点ポイントや診査項目で何が問われているかは大抵の経験者はわかってしまう。
・技術面
・事業化面
・政策面
この3つの審査の各分野でどれだけ、PRできるかがポイントである。
診断士の研究会では色々と先輩診断士の方から貴重な情報が入ることがある。今回はとある研究会で、先輩診断士のお話が大変役に立った。多分今まで意識していなかった政策面についても、書けたように思い有難く思います。この場をお借りして、感謝申し上げます。
3 説明用のイラストやデータ図表作成の大切さ
説明内容を文章だけでなく、一目でわかる「棒グラフや円グラフ」、「ビフォアーアフター比較図」、「工程分析図」などを図で書けることも説得力を持ち重要だ。今回も、ここは意識して行った。時間を惜しまず、コツコツと一つの説明イラストを作るのに何度も何度も書き換えて作った。そして、起承転結、一貫したストーリーづくりも説得力を持たせるために重要である。
4 指定されたルールの把握やミスや誤字を減らすこと
この診査は、あるべ書類が間違った場所にアップされていたなかったり、有効な日付でなかったりした時点で、「はい、さよなら」である。充分注意してもし切れない位のチェックが必要である。今回は、自分の身内の頼りになる人物のチェックや、商工会担当者の方にもミスを第三者の目でチェックしていただけ大変有難かった。
5 電子申請の難しさ
今回から、電子申請のみの申込方法となった。慣れない操作方法の手順書を読みながら、漏れのないにアップロードや、マークへのチェックが必要である。
今回、一件ヒヤリハットの事件が起こった、20日〆切時間の30分前(14時30分)に、最後に申請ボタンと押そうとしたら、いつまで経っても終了にならない。電波状況が悪いのかな?と思い、外に出ても一行にアップできない。焦りまくり、事務局に電話しても、「電子申請の事務局に電話してください」等のつれない返答である。この状況が結局〆切の15時を過ぎても続き、最後はエラーが画面が出て終わりとなった。
これで申請ができないのかと怒りと落胆の入り混じった気持ちであったが、東京の補助金事務局に電話をしたら、他のログイン方法を教えてくれて、なんとか受理番号を得て申請を終了することができた。
6 今回取り組んだ内容箇条書き(備忘記録)
(1)<技術面>
・経営者の写真は必ずトップ右に出す。(印象を良くするため、笑顔かつ誠実な人物像を見せる。)
・事業内容を説明するのは、丁寧に行う。審査員には、正直言ってアルバイト審査員もいて、全く知識が薄い人も中にはいるはずである。そのような人にもわかるように噛み砕いて、どんなことを行っている会社なのか丁寧に説明する。(中学生にもわかるように)
・もの補助で機械を購入しようとする会社の技術は、どんな会社でも簡単ではなく説明が難しい。それを上手く説明しているネット画像やイラストを加工して分かり易く説明する。当該企業の技術がどれだけすごい技術なのか?、自分が理解して(インプット)、分かり易く記載する。(アウトプット)
・ネガティブな情報はオブラートに包み、「あばた(皮膚に残る小さなくぼみ)」を「かわいいエクボ」のような表現に極力近づける。順風満帆で非の打ち所がない企業なんでそんなにない。どこも、ぎりぎりの中で泥臭く、中には「ちょっとどうかな?」と思われる弱みもあることが多いが、それを絶対ダイレクトに出さないようにする。
癌細胞も良化すればただのできもの(ホリープ)であり、あばたも書きようによっては、エクボに見えることもあるのだ。
・当該企業の強み(コアコンピタンス)は嫌味になってたり、自慢にならないように気を付けながらも、「この企業は大丈夫」と思われるように明確にしっかりと書く。いかにこの企業が凄いかを書いてあげないと、自信のない申請者に大切な税金を投入して、経済の下支えを行おうとは思わない。
・現在の生産(業務)工程は課題を明確にして書く。機械を買うことが解決策なのだから、当然今の機械でも能力が劣っているからには間違いない。しかし、それをquality(品質)、price(価格)、delivery(納期)のQCDに分けて、いかに今の機械がボトルネックとなる状況を生み出しているかを図表やグラフと共に説明する。
・「課題解決」の為の本事業。課題解決の為に、当該機械を購入できれば、先の3Cがどう改善するのかを棒グラフなどでビジュアル的に示す。
・「革新性」について。強くPRしなければならない、「革新性」は機械の性能が革新的であるだけでは少し弱い。自社の事業の改善にとっていかに革新的なのかが重要である。それには、出来なかった事業や難易度の高い製品ができるようになる(品質があがる。quality)。人件費や材料費なので無駄が省け、コスト削減になる。(コスト削減 cost)、生産(業務)時間の短縮や納期改善での失注を防ぐなど(納期 delivery)にわけて書きたい。その際にビフォアーアフターの形で、現状と対比させて書けえれば、比較し易く説得力を増すように思う。
(2)<事業化面>
・当該事業を進めていくには、3C分析【Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)】はかかせない。技術面で自社の強みは既に説明した。今度は、当該機械を購入できたら(事業を実施できたら)、ちゃんと売上や収益があがるのかをしっかりと説明しなければいけない。いわゆる3C分析に沿った説明である。
・市場分析については、マクロ(全国単位)とミクロ(県や市単位)での具体的な市場の動向の図表などを用いながら、充分市場が見込めることを書かなければいけない。その際に、事業が1つだけでなければ、2つに分けて各々記載する必要がある。
・Competitor(競合)については、当該企業は中小企業なのだから、当然大企業が市場にはいるわけで、「大企業の存在があっても大丈夫」ということもデータ根拠を元に書きたい。また、競合名はできれば実名で県内・市内に何社いて、どれくらいの市場規模なのかを円グラフなどで書けるとよいと思う。そのなかで、自社が持つ強みは競合につぶされることなく勝てる(少なくとも負けずに生き残っていける)ということを書きたい。
・company(自社の事業を実施した際の効果)について。本機械を購入できたなら、「具体的にこの製品(商品)は現状と比べてこれだけ売れていく」ということを数値を用いて書いていく。今まで受注できずに失注していた高額な受注も受けられるようになるということも書けると良いと思う。
(3)<政策面>
・ここまで、技術面と事業化面について書いてきた。ここまでしっかり書ければ、概ね土俵から外れる事はないように思うが、安心してはいけない。なぜなら、交付要領にはこの政策面の審査も3つのうちの一つとしてあると出ているからである。
政策面は何かと言えば、国の政策に合致しているか?、地域経済に役立つか?雇用を創出できるか?などの社会的な側面での評価と考えて良いと思う。この点にも触れないと足を救われることになると思う。
よって、雇用を増やす、何でも良いので、社会的な課題・問題を解決できる一助になる事業であるということを書きたい。
(4)その他<財務計画>
・最後に残っているのが、「会社全体の事業計画の算出根拠」(売上計画)である。この数値計画は単体の商材までブレイクダウンとして数量×単価がどう増えていくのか?と細かく、間違いないように書きたい。
7 まとめ
補助金申請の支援は、やればやるほど実力はあがっていくように思う。いかに読みやすく、わかりやすく、説得力を持って、この会社に補助金を支給すれば、当該業界の底上げとなり、全体としての経済が潤ってくると思わせるように書ければいいのだ。
最後に、この補助金獲得が出来るか否かは、当該経営者にとっては大変重要なことであり、会社の今後の活動を広げられるかがかかった重要な申請である。
よって、支援者としてもそのことを肝に銘じ、常にスキルアップを目指していきたい。